給水型浄水ウォーターサーバー
環境ライター・ジャーナリスト執筆
地球温暖化による海水温の上昇、酸性化、そしてプラスチックごみの拡大など、今私たちをとりまく海の環境が大きく脅かされています。中でもプラスチックごみは私たちが直接作り出した廃棄物だからこそ、その対策も可能です。海洋生物はもちろん私たちにも影響を及ぼすマイクロプラスチックごみを抑制するためにできることはどんなことでしょうか。まずは海洋プラスチックのごみがどこから来て、どんなものに変化していくのか、そしてその影響はなど、マイクロプラスチックの発生の仕組みを知り、効果的な対策を考えましょう。
環境省はマイクロプラスチックを5mm以下までの小さな破片に砕けたプラスチックと定義しています。元来、自然界にはプラスチックは存在しません。
海の中に漂うプラスチックごみはすべて人間が排出したものですが、有機物と異なり、生分解されないため、半永久的に⾃然界に残ります。
マイクロプラスチックは、⻭磨き粉や洗顔剤に含まれるマイクロビーズや、レジ袋やペットボトルといったプラスチックごみなどが紫外線や波にさらされ細かくなったものが主なものですが、微小なため回収しにくく、さまざまな生物が体内に取り込んでしまう性質があります。
マイクロプラスチック発生の原因となるのが、廃棄されたプラスチックごみです。プラスチックは手軽で耐久性に富み、安価に生産できることからその生産量は年々急増し、環境省の調べによると、世界では毎年少なくとも800万トンものプラスチックごみが海に流出しています。
そしてこの海洋プラスチックの8割以上は、陸上で発生し海に流入したものです。このままいくと2050年には海洋プラスチックごみの量が海にいる魚を上回ると世界経済フォーラムは予測しています。日本近海には、世界平均の27倍のマイクロプラスチックが漂っており、そのホットスポットとなっています。
この地球規模の問題について、2019年に開催されたG20大阪サミットにおいて、2050年までに海洋プラスチックごみによるこれ以上の汚染をゼロになるまで削減する「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が提案され、87の国・地域がこのビジョンを共有しています。
また、同年のスイスのジュネーブ締約国会議では、汚れた廃プラスチックが国境を越えて移動することを制限する「バーゼル条約」が可決されました。生物多様性や人の健康にも関わるマイクロプラスチック問題は地球規模で取り組んでいく喫緊の課題となっています。
マイクロプラスチックには大きく分けて、次の2つの種類に分けられます。
分類 | 概要 |
---|---|
一次的マイクロプラスチック | 洗顔料や歯磨き粉のスクラブ材等に利用されているマイクロビーズ、フリースなどの繊維くず等。排水溝等を通じて自然環境中に流出。 |
二次的マイクロプラスチック | 大きなサイズで製造されたプラスチックが自然環境中で破砕・細分化された結果、マイクロサイズになったもの。 |
出典元:環境省|海洋ごみとマイクロプラスチックに関する環境省の取組
以降では、それぞれについて詳しく解説します。
一次的マイクロプラスチックとは洗顔料・歯磨き粉といったスクラブ剤などに利用される小さなプラスチックのことで、主に家庭の排水溝などから下水処理を通り、海へと流出します。最近では衣類のフリースなどを洗濯する際にでる小さな繊維くずや、メラミンスポンジや人工芝からの流出もこの一部として問題視されています。
一度流出すると回収はできず、製品化された後の対策は難しいとされます。
二次的マイクロプラスチックは、街に捨てられたビニール袋やペットボトル、食品トレイ、タバコのフィルターといったプラスチック製品が川を伝って海へ流出し、紫外線による劣化や波の作用などにより破砕されて、マイクロサイズになったものです。世界で最も多いプラスチックごみは容器包装類で3割以上を占めます。
日本は1人あたりのプラスチック容器包装の廃棄量は、UNEP報告書によると米国に次いで世界で2番目に多いという事実があります。二次的マイクロプラスチックは、元になるプラごみの発生を抑制することで削減できます。
地球規模で問題となっているマイクロプラスチックの問題点は多岐にわたりますが、主に以下の5つの観点に分けられます。
マイクロプラスチックはサイズが小さく、海や自然界に流出すると回収はほぼ困難で、さまざまな回収方法が試されていますが、まだ抜本的な解決策がないのが現状です。
マイクロプラスチックは小さく砕けていく過程でその表面に海中に漂う様々な汚染物質が吸着していくことが知られています。この有害化学物質には、すでに使用が禁止されたDDTやPCBといった体内に残留性のある有機汚染物質も含まれます。
また、プラスチックそのものにも、すでに難燃剤や紫外線吸収剤など人体に有害な添加剤や生殖機能に影響する環境ホルモンが含まれています。この有害物質を含んだマイクロプラスチックが海洋生態系に取り込まれることで物理的・化学的な影響を及ぼすことが研究結果で明らかになりつつあります。
たとえば、海洋生物の炎症反応、摂食障害などにつながったり、「環境ホルモン」作用がある物質により、生殖能力の低下などの作用を及ぼす可能性が指摘されています。
マイクロプラスチックを海洋生物が摂取することで、食物連鎖により人間もマイクロプラスチックを摂取することが予想されます。
これまでの研究で、マイクロプラスチックが人の排泄物や血液にも含まれていることが明らかになっています*1。それは人がマイクロプラスチックを摂取した魚や貝などの海産物を食べたり、マイクロプラスチック入りの歯磨き粉を使ったり、食塩などにも含まれているからです。
魚がより大きな魚に食べられ、それを人間が摂取することでマイクロプラスチックの濃度は上がっていきます。それが人間の体に、具体的にどのような影響を及ぼすかはまだ解明されていません。
プラスチックごみによる年間の損失は、観光業年間6.2億ドル、漁業・養殖業では年間3.6億ドルになると推定されています。これはマイクロプラスチックを含むプラスチックごみによるものです。
中でも「ゴーストギア」と呼ばれる海に流出した漁網やロープ、釣り糸などプラスチック製の漁具に絡まったりすることで多くの海洋生物が死傷したり、漁獲の減少、船のスクリュー巻込みなど船舶の航行阻害や、景観の悪化による観光業への影響が問題化しています。
プラスチックごみやマイクロプラスチックの原料は石油です。プラスチックを生産する際にも、処分する際にもCO₂を排出します。
プラスチックの生産拡大がこのまま続くと、気候変動に関するパリ協定の目標である「2℃未満」を達成するときに許される2050年のCO₂排出量の約15%を、プラスチックの生産および焼却時の排出が占めると2016年 エレンマッカーサー財団では試算されしています。プラスチックの使用や焼却処分を減らすことは地球温暖化の対策にもつながります。
国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」をはじめ、脱プラスチックに向けた動きが世界的に加速しています。国によるレジ袋の有料化や抑制はすでに70ヵ国以上で実施されています。特に先進的なのは欧州の各国で、EUは使い捨てのプラスチック製品を2021年から禁止する規制案について基本合意しています。マイクロプラスチック添加製品の規制も各国で始まっています。
世界的な企業も“脱プラスチック”に向けて舵を切っています。プラスチック廃棄・汚染ゼロの啓発活動を行うエレン・マッカーサー財団が国連環境計画(UNEP) と共に行った提案により、コカ・コーラ、ダノン、ネスレ、ユニリーバなど大手企業約500社・団体が、2025年までにすべてのプラスチック包装を再利用か、リサイクルか堆肥化できるものに替えて循環させる共同宣言に署名しています。
国 | 主な取り組み |
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日本 |
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EU(欧州連合) |
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フランス |
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イギリス |
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イタリア |
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オーストラリア |
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韓国 |
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米国 |
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インド |
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日本でも脱プラやマイクロプラスチック問題に向けてさまざまな取り組みが行われています。中でも企業の脱プラへの取り組みが加速しています。
これは、2022年4月から施行された「プラスチック資源循環促進法」により、特定プラスチック使用製品として定められた12品目に関して、提供方法の見直しや提供する製品自体の工夫に努めなければいけないとされたことにもよります。
EXAMPLE 01
花王や資生堂、コーセー、P&Gジャパンといった大手化粧品企業はマイクロプラスチックビーズの使用を取りやめている。
EXAMPLE 02
コンビニ各社やコーヒーチェーンは使い捨てのストローやプラ容器を紙や他の素材にしている。
EXAMPLE 03
セブンイレブン、ローソンなどコンビニ各社やイオンなどのスーパーはペットボトルを再生素材に変更したり、店頭に回収ボックスを設置。
EXAMPLE 04
三菱電機、パナソニックなど大手家電企業:エアコン、洗濯機などの家電に使われたプラスチックから再びプラスチックを再生し製品に利用。
EXAMPLE 05
ソニー:小型製品のプラスチック包装材の全廃、大型家電の発泡スチロール製の緩衝材を撤廃。
自然界へのマイクロプラスチックの流出を食い止めるために、家庭や個人でもできることがあります。問題の解消に向けて、個人でもできる対策があります。暮らしの中でできる工夫やアクションをご紹介します。
マイクロプラスチックを減らすためには街から出るプラごみを減らすことが第1歩です。毎日の暮らしの中でプラスチックごみをなるべく出さないためには、まず使い捨てのプラスチック製品の使用を削減すること、プラ容器や包装を使った製品の利用を減らすことが効果的です。
たとえば、詰め替えできる製品、リフィルを選ぶようにする、ペットボトルの替わりにマイボトルを持ち歩く、使い捨てのストロー、カトラリー、ビニール傘は使わない、買い物にはエコバッグを持参する、食品ラップの替わりに蜜蝋ラップや蓋付き容器を使う、ホテルなどに泊まる時になるべく使い捨てのアメニティは使わない、量り売りのできるお店を選ぶなど、工夫次第で暮らしの中から出るプラごみを減らすことは可能です。
海洋プラスチックごみの7〜8割が街から発生しています。雨が降った際などに路上のごみが川や水路に流出し、海へと流れ出ます。
このプラごみの発生原因は大きく分けて「投棄・ポイ捨て系」と「漏洩系」に大別できます。ポイ捨てや不法投棄を絶対にしないこと、またごみ集積所などをカラスなどに荒らされないように清掃しておくことも大事です。
日本各地の海岸でビーチクリーンのボランティアを募集しています。主催は地域の環境団体やNPOなどさまざま。こういった海岸の清掃活動に参加することで、海洋プラスチックへの関心も高まり、行動変容につながります。最近ではジョギングとごみ拾いをかけ合わせた「プロギング」と呼ばれるフィットネスも人気となっています。
また、企業も海洋プラごみの回収に消費者を参加してもらい、意識を高めるイベントを行っています。たとえば、アディダスは海洋環境保護団体「PARLEY FOR THE OCEANS」と共に、ランニングイベントを実施。参加者が走った距離に応じて海洋プラスチックごみを回収するという試みを世界で実施しています。
プラスチックをリサイクルすることで、新たなプラスチック製品や、化学製品の原料などに再利用することが可能です。プラマークやPETマークが付いているプラスチック製品がリサイクルの対象となります。
廃プラスチックが汚れていると、リサイクルされた製品の品質が低下してしまうため、食品や飲料のプラスチック容器などは綺麗に洗ってからリサイクルに出しましょう。
日本はこれまでプラごみを焼却処分する「サーマルリサイクル」が多く、廃プラスチックから新たなプラスチック製品を作る「マテリアルリサイクル」や、廃プラスチックを原料に分解し再利用する「ケミカルリサイクル」への取り組みが遅れていましたが、最近では大手飲料メーカーなどが使用済みペットボトルを新たなペットボトルに再生する「ボトルtoボトル」の取り組みを強化しています。使用済みのペットボトルはきちんと回収ボックスに入れてリサイクルしてもらいましょう。
化粧品や衣類など身の回りにはマイクロプラスチックを使った製品が数多くあります。こういった製品をなるべく避け、天然由来の代替原料を使った製品を使うようにすることがマクロプラスチックを家庭から排出しないことに直接つながります。たとえば、「ポリエチレン」を使わずに種子など生分解する素材を使ったスクラブや、セルロースを使ったスポンジなどを選ぶと安心です。
また、フリースや合成繊維を洗濯する際はマイクロプラスチックを水に流さない専用の洗濯バッグを使うことも有効です。フランスでは洗濯機にマイクロプラスチック用フィルターの設置の義務付けが始まります。
これまで見てきたように、マイクロプラスチック問題の対策には、まずその元になるプラスチックごみを減らすこと、マイクロプラスチックを発生させる製品の利用を避けることが挙げられます。
特にプラスチックごみの中でも3割を超えて最も多いペットボトルなどの容器包装のごみについて対策を行うことが効果的です。たとえば、自宅にウォーターサーバーを備えて、マイボトルで利用することでペットボトルの利用などを抑制できます。
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箕輪弥生(Yayoi Minowa)
東京下町生まれ。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。環境教育から企業の脱炭素、循環型ライフスタイルまで幅広いテーマで環境分野の記事や書籍の執筆・編集を行う。自身も太陽熱や雨水を使ったエコハウスに住む。著書に「地球のために今日から始めるエコシフ15」文化出版局、「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」・「環境生活のススメ」飛鳥新社ほか。日本環境ジャーナリストの会 会員。